EUがプラスチック戦略を打ち出し、欧州委員会のフォン・デア・ライエン委員長がグリーン・ディールを打ち出したこともあり、プラスチック使用量の削減、リサイクル率の向上へ向けての政治的圧力が増している。包装物を中心としたプラスチック製品のユーザーの流通業界も、試行錯誤しながらそれに対応している。欧州の小売りおよび卸売業界を代表する団体ユーロ・コマース(Euro Commerce)のニール・マクミラン政策・通商部長とニック・ドルンハイム環境・サステナビリティ・アドバイザーにプラスチック問題について聞いた。
流通業は消費者と直に接するため、消費者の意向に敏感でなければならない。消費者の環境意識には応えねばならないと考えるが、実際に機能する代替案・解決策を実行する必要がある。低所得の消費者を考慮すると、コストの問題も無視できない。
プラスチックは耐久性、防水性などの点で、特に食品包装のためには優れた素材。野菜、果物を入れる薄いプラスチックの袋を紙に変えたところもあるが、消費者がそれに満足しているとはいえないだろう。また、代替素材について、紙の製造に際してはプラスチック製造よりも多くのエネルギーを消費し、多くの二酸化炭素(CO2)が排出される。竹製の食卓用のカトラリーは、サステナブルとはいえないのではないか。プラスチックボトルよりもはるかに重い、ガラスボトルの運搬にはプラスチックボトルの運搬以上のCO2が排出される。トータルでみて、環境負荷が低いのは何かを考える必要がある。
会員企業の中には、リサイクル困難な素材からリサイクルしやすい素材に、複層材料から単一のポリマーから成る材料の利用に、シフトする動きがある。また、見栄えがいいので高級食品でよく使われる、黒いトレーは自動分別機が認識できず、リサイクルできないので、白などほかの色でリサイクルしやすい、プラスチックや紙素材のものに切り替えるという動きもある。野菜や果物の全体をプラスチックで包装する代わりに、バナナをベルト状のプラスチックで束ねてそこにバーコードを印刷する、カボチャなど皮の厚い野菜の皮に、人体に無害なレーザーを使って直接バーコードを印字する、砂糖とセルロースから成る包装材を使う、などの試みもある。
一方、食品と接触するプラスチックには高い品質の要件が規定されているが、こうしたプラスチックのリサイクルは、現状では強い溶剤を利用して化学的に行われる。エネルギー消費と環境への影響だけでなく、現行のEU法では、化学的リサイクルに由来する再生プラスチック素材を食品包装に利用できない、という問題もある。
使い捨てプラスチック製品禁止のためのEU指令については、ガイドラインがまだ出ていない。ガイドラインが出ないと、会員企業としてもどう対応するかの方針を定めることができず、各国政府も適切な各国法制度化ができない。2020年の夏ごろには出るとのことなので、その後に関係する企業各社の対応と、各国法制度化が進むのではないか。カトラリーや皿については、既に紙製品や植物製品(木材、竹など)へのシフトも進んでおり、対応は簡単だろう。
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March 25, 2020 at 11:59PM
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試行錯誤しながらプラスチック問題に取り組む欧州流通業界(欧州) | ビジネス短信 - ジェトロ(日本貿易振興機構)
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