3月初めに経済協力開発機構(OECD)は新型コロナウイルス感染拡大の影響を考慮し、2020年の世界経済成長率を2.4%と19年11月の前回予想から0.5ポイント引き下げた。それから1か月もたたない3月下旬、今度は国際通貨基金(IMF)がマイナス成長の可能性を指摘した。
世界経済がマイナス成長となれば09年の金融危機以来のことだ。金融危機では経済活動の低下により欧州排出量取引制度(EU-ETS)や京都議定書に基づく温暖化ガスの排出量取引が低迷。その後の排出枠価格の暴落へとつながった。
一方で、景気回復と気候変動対策の投資という一石二鳥の「グリーン・ニューディール」は米国でオバマ政権誕生の原動力ともなった。今回のコロナウイルス問題は気候変動対策にも大きな影響を与えそうだ。
足元をみれば、既に自動車販売などの減少で製造業が生産を減らしており、鉄鋼など素材産業にも影響が及びつつある。エネルギー需要、とりわけ化石燃料の需要が減少しそうだ。
12年前の金融危機に比べ、サービス部門の比率が上昇しているなど経済構造の違いもあるが、排出量が減る可能性は極めて高い。排出量減少は良いことだが、経済不振が原因ではいずれリバウンドする。
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気になるのは、国際交渉の遅れだ。11月に英グラスゴーで予定されていた第26回国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP26)は延期が決まった。30年目標の強化と50年への長期戦略を議論し、パリ協定の実施ルールを決めるはずだった。
また長期目標検討の際に参照される気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の第6次報告書や国際エネルギー機関(IEA)のエネルギー分析などの作業にも遅れが生じている。
最も敏感に反応しているのが排出量取引だ。今、世界の排出量取引を代表するのがEU-ETSの二酸化炭素(CO2)排出枠価格。既に電力需要減少を受けて2月末の1トン当たり25ユーロから一時16ユーロ台へと40%近い下落となった。
また、国際航空の炭素中立成長(CNG)のための排出量取引では、3月に超過排出量を相殺するために使われるクレジットの種類が決まった。だが肝心の航空会社は、どこも大幅減便・減収で、すぐに購入に動きだす会社は少ないだろう。排出削減投資の後押しが期待されていたものの、肝心の資金が流れず、投資は動かない。
3月26日の20カ国・地域(G20)首脳のテレビ会議で5兆ドル以上と日本の国内総生産(GDP)に相当する規模の景気刺激策が発表された。世界恐慌の危機感からIMFが戦時体制と戦後復興策に例えているように、まずは生活支援や産業の流動性確保などが緊急対策だろうが、感染が落ち着くにつれて本格的な景気回復の対策となる。
金融危機で経済のV字回復が可能となったのは中国の景気刺激策が大きかったと言われている。09年の世界のエネルギー需要はマイナス1.1%だったが、中国の需要は6.6%増えた。
仮に中国のエネルギー需要が前年並みだったら世界需要はマイナス2.3%に低下していた。エネルギー需要を見ても中国の刺激策の効果がうかがわれるが、今や中国経済は成熟期に入ったし、インフラ需要も減っている。以前ほどの効果は期待できないだろう。
景気刺激策は経済に貢献したが、一方でエネルギー多消費の産業やインフラへの投資が中心だったため、その後排出量の増加傾向が定着してしまった。
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この教訓は今後の日本をはじめ各国の刺激策に生かすべきだ。発電の低炭素化や電力システムのレジリエンス(復元力)強化、資源効率を高めるための循環型経済、それにエネルギーや資源の効率的消費に欠かせないデジタル化は忘れてはならない投資だろう。
もちろん、主目的は経済の回復だし、再生可能エネルギーは稼働後の雇用創出効果が小さいなど限界もあるが、可能な限り、気候変動対策を含め次世代につなぐ投資に向けるべきだろう。
悩ましい問題も出てきた。医療機器やマスクの不足、食料や日用品の買いだめ需要などからサプライチェーンのリスクが指摘され、国産の重要性が主張されるようになった。
他方で、日本の産業は貿易や海外投資によるエネルギーと資源などのコスト引き下げ効果、製品市場の拡大効果を存分に活用しており、それが日々の生活を支えている。
昨今のナショナリズムの高まりと相まって、各国が極端に国産指向になると、効率の悪い設備の生産も増える。そうなれば排出量も増え、削減コストも増加する。持続可能な社会には、サプライチェーンの複数化などの工夫により、貿易の利益、安全保障、そして気候変動対策のバランスが必要だろう。
コロナウイルスの治療法にめどがついても感染収束には2~3年かかるのでは、という見方もあり、出口はなかなか見えない。だが今は長期的視点で、ピンチをチャンスに変える気候変動戦略を練るべきだろう。
[日経産業新聞2020年4月10日付]
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