虐待や貧困、いじめといった現代の子どもたちの問題に真正面から向き合う2つの映画が公開となる。なぜいま、深刻なテーマを世に問いかけるのか。作り手2人に製作の経緯や狙いを聞いた。

「ひとくず」の一場面(C)上西雄大
「衝撃を受け、怒りが湧き、気持ちを落ち着かせるためにどんな人物なら子どもを救い出せるだろうかと想像した」
■一晩で脚本執筆
映画「ひとくず」で監督・脚本・主演を務めた上西雄大が語気を強める。
上西は大阪市の劇団「テンアンツ」の代表。きっかけは約2年前、発達障害をテーマにした別の映画を作る過程で、今作を監修した精神科医の楠部知子に出会ったことだったという。
大阪府内の児童相談所に嘱託として勤務経験がある楠部から聞かされたのは、肌にアイロンを押しつけられるなど、「むごい虐待」の実態。脚本は一晩で一気に書き上げたという。
上西演じる金田は、空き巣に入ったアパートの一室で、全身ボロボロで食べ物もろくに与えられていない女児と出会う。金田も子どものころ虐待を受けた人物。女児を連れ出し、曲がりなりにも「家族」になろうとする。

「虐待は誰にとっても身近な問題」と話す「ひとくず」監督、脚本、主演の上西雄大
関西で全て撮影したが、方言や地域を象徴する場所は登場しない。「全国どの地域の人にも、身近に起こりうる問題として捉えてもらいたい」
女児の母親もかつて虐待を受けていたが、恋人による女児への暴力を止められない。虐待の「負の連鎖」も楠部から聞かされた実態だった。上西は「(撮影を通じて)子どもの愛し方が分からない大人の側にもおびえがあると感じた。周囲が温かな気持ちで寄り添えば、おびえは緩むのでは」と指摘する。作品は暗いシーンが続くが、最後は人間の良心に救いを見いだす。
ミラノ国際映画祭最優秀作品賞や、ロンドン国際映画祭グランプリを獲得するなど、国内公開を前に海外で高い評価を得た。「人間の良心や家族への思いが、美しいものとして受け取ってもらえた」と手応えを語る上西。「役者は医者とは違って直接命を救うことはできないが、作品が虐待に目を向けてもらうことにつながれば」と力を込める。
■「見た人と議論を」
一方、「東京五輪にカジノと大人が浮足立つ中で、子どもに目を向けさせたい」と話すのは、映画「子どもたちをよろしく」を企画した統括プロデューサーの寺脇研。元文部官僚で映画評論家であり、京都造形芸術大客員教授も務める。作品は貧困やいじめ、虐待の問題を構造的に浮き彫りにする。「官僚生活や、福岡県や広島県で教育行政に携わって目の当たりにした実態を基に描いた」という。

「子どもたちをよろしく」の一場面(C)子どもたちをよろしく製作運動体
舞台は寂れた地方都市。男子中学生の稔は、日常的に父親から虐待を受けている。ある日、ひそかに憧れを抱く母親の連れ子の姉・優樹菜が風俗で働いていることに気付く。稔のやり場のない感情は、父親のギャンブル依存により貧困に陥った同級生・洋一へのいじめに向かう。暴力は過激さを増し、最終的には自殺に追い込んでしまう。
「ひとくず」とは対照的に最後まで救いがない。見る者には後味の悪さが残るが、それが作り手の狙いでもある。「自分の子どもや世間の子どもたちとどう向き合うか。考えを巡らしたり、一緒に見た人と議論したりしてほしい」

「子どもたちをよろしく」統括プロデューサーの寺脇研は「子どもたちに世間の目を向けさせたい」と言う
元文部官僚が企画した映画にもかかわらず、学校は登場しない。寺脇は「責任逃れと言われるのは覚悟しているが、学校だけの問題と捉えられたくなかった」と意図を語る。くしくも公開が、新型コロナウイルス対策での休校措置と重なった。「社会全体で子どもをどう見るか、考えざるを得ないタイミングだ」
「子どもたちをよろしく」は13日からテアトル梅田(大阪市)と京都みなみ会館(京都市)、14日から元町映画館(神戸市)で公開。「ひとくず」も4月17日以降、この3館で公開される。
(西原幹喜)
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March 13, 2020 at 12:01AM
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