ここ数年、引越しをしたいのに業者が見つからない、見つかっても非常に高額な料金を請求されるという「引越し難民」が社会問題になっている。3月は引越しのピークシーズンだが、場合によっては2月の今でも引越し業者を見つけるのは難しいかもしれない。引越し難民が発生する背景には何があるのか。そして、解決法はあるのだろうか。
人手不足と働き方改革 業界の構造問題
そもそも引越し難民が発生する背景は、需要と供給のバランスが悪くなっていることだ。そう話すのは、引越しなど新生活に関わる手続きを代行するリベロの鹿島秀俊社長だ。
同社は、利用者に代わり複数の引越し業者に見積もりを取るサービスを手掛ける。単に連絡先を業者に伝えるのではなく、訪問などで荷物の量を確認したうえで、複数業者に見積を依頼するので、利用者にとっても引越し業者にとってもムダを省ける。2009年の創業から、すでに200万件の各種手配を手掛けてきた。
「引越しのような重い荷物を運ぶより、宅配料金も上がって軽い荷物を運ぶほうがもうかるようになった。そして、若者の免許の取得率も下がっている。さらに、働き方改革で、これまで1日に5件ほどの引越しをやっていた業者が、就業規則などのルールが整備されて、1日3件以内に抑えるようになっている」(鹿島氏)
引越し自体の需要は変わっていないが、人手不足に加えて働き方改革の進展で供給がタイトになってきている。ヤマト運輸の値上げや、レオパレスの施工不良問題に端を発した引越し問題などが、引越し難民に拍車をかけたが、そもそもはこうした業界の構造が要因にある。
引越し業者はニーズに応えようとギリギリの努力を続けてきたが、それも限界。「ギリギリなんとか……はならなくなってきた。繁忙期では20%くらいをお断りせざるを得なくなってきている」と鹿島氏は業界の現状を説明する。
特に厳しい、長距離の家族引越し
特に厳しいのが、東京から大阪のような長距離の引越しだ。引越し業者は地域に密着した零細業者が多く、全国展開しているのは1割程度の大手業者だけ。「例年、2月上旬くらいから引越し難民が出てくる。全国展開している大手に長距離が集中して、パンクしてしまう」と鹿島氏は話す。
大手でなくても長距離の引越しは不可能ではない。しかしそこにはビジネス上の課題があった。
「家族の長距離の引越しで、例えばトラック2台、おとな4人を3日間拘束することになると、百数十万円くらいになっても仕方ない。同じ人数と期間で地元で同じだけ受注したほうが効率的だからだ。忙しいからといって、無茶苦茶な金額を取っているわけではない」(鹿島氏)
しかしこれだけの価格を提示すると「高い」と悪評が立ってしまう。SNS全盛の今、こうしたリスクをできるだけ避けたいというのが、引越し業者の思いだ。
さらに、鹿島氏は「長距離で帰りの荷物がなると、帰りがロスになる」と話す。地域の引越し業者は帰りの引越し案件がなく、トラックを空にして帰ってくることになる。こうしたビジネス上の課題から、長距離の引越しが難民化しやすいわけだ。
引越し案件をマッチングするHAKOPLA
リベロはこの「空のトラック」に引越し難民問題を解決する鍵を見出した。「帰りのトラックが空になってしまうので、長距離の引越しはみんな受けない。でも東京から福岡に行く人がいるということは、逆の人もいる。うまく日程をマッチングすれば、往復便が完成するはず」(鹿島氏)
そこで開発したのが、引越しの案件を業者同士でマッチングするシステムHAKOPLAだ。遠距離の引越し依頼があったら、業者はHAKOPLAに案件を登録。帰りの引越し依頼が見つかったら、うまく日程を調整することで帰りも荷物を運ぶことができる。トラックが空でなくなるため、引越し料金も下げることが可能だ。
「片道だけの案件で60万円を提示し『高い』と言われながら引越しをするよりも、30万円+30万円で受けたほうが、利用者にとっても引越し業者にとってもいい」と鹿島氏。
HAKOPLAは、19年7月にスタートし、この1月には月間1000件をマッチングした。提携する引越し業者も50社を突破。80社が視野に入っている。鹿島氏は「月間1万件くらいのポテンシャルはある」と胸を張る。
トラック空きスペースマッチから、ダンボール回収のマッチも
1月には案件単位ではなく、トラックの空きスペースをマッチングするサービスも開始した。行程と立方メートル単位で空き容量を登録し、他社の荷物も運ぶ仕組みだ。
リベロが引越し業者の間に入り、業務効率を最適化する仕組みはこれにとどまらない。現在、ダンボールの回収業務をマッチングする仕組みも展開中だ。引越し後、使ったダンボールは業者が回収するが、遠距離の場合、回収だけのためにトラックと人を割くのは大きなコストだ。これを地元の業者に依頼することでムダを省く。
さらに繁忙期と閑散期で大きな差が出るという、業界特有の課題を生かした取り組みも始める。宅配業界は慢性的にパンク気味だが、引越し業者は閑散期の仕事がほしい。「閑散期に、重い宅配便の荷物を、引越し会社がマッチングして運ぶという話が進んでいる」と鹿島氏は明かす。
地元密着業者が多く、参入障壁が低い、付加価値による差別化が難しいといった特徴を持つ引越し業界では、なかなか業界内での交流も少なく、共同で仕事を調整するということもできなかった。HAKOPLAなどの仕組みを通じて、リベロが業界のハブとなり、引越し業者の会合を主催。業界全体で効率化を進めていく意向だ。
「引越し難民問題の解決は、繁忙期のためだけにトラックや人の数を増やすことはできない。1社1社のロスをなくすのももう限界。業界全体のロスをなくして、供給量を最大限に増やすことで解決したい」と、鹿島氏は思いを話した。
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February 21, 2020 at 05:52AM
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