フランス語圏のカナダ、ケベック州をご存じですか。人口比では少数派ながら、実はカナダのルーツはここにあるのです。デザイナーでエディターのコヤナギユウさんがお伝えする3回シリーズのケベック旅、2回目は州内最大の都市モントリオールです。歴史と現代が結節する「生きる喜び」をモットーとする街とは。
(文・写真・イラスト:コヤナギユウ トップ写真はサンテレーヌ島からモントリオール市街地を望む絶景ポイント)
「生きる喜び」と訳されるフランス語「ジョワ・ド・ヴィーヴル(Joie de vivre)」は、モントリオールに暮らす人々のモットーだ。だから、夏場は労働者の「生きる喜び」を優先し、道路工事は中止する。そのかわり、秋になると一斉に工事が始まり、街中通行止めだらけになる。
ケベック州のモットーが「わたしは忘れない(Je me souviens)」だったことを思うと、なんともラテンなノリだ。
州最大の都市モントリオール。母語をフランス語とする「フレンチ・カナディアン」が8割を締め、カナダ国内でもトロントに次いで人口が多い。ケベック州に暮らすフレンチ・カナディアンは「ケベコワ」と自称するが、この街に暮らす人々は「モントリオーラー」略して「モレアレ」と呼ぶ。
セリーヌ・ディオンやジャスティン・トルドー首相(生まれはオタワ)の出身地で、シルク・ドゥ・ソレイユの本拠地。ジャズやアートといった芸術文化が根付き、一年を通して街中でなにかしらのフェスティバルが開催されているため、歩いているだけでも退屈することはない。
成田空港からエアカナダの直行便が2018年に就航し、日本から注目が集まっている街でもある。しかし、第1言語がフランス語のためか、日本語での情報が少ないのも事実。定番から注目スポットまで、地区別に「生きる喜び」を感じられる場所を紹介したい。
モントリオールの代名詞、旧市街「ヴュー・モントリオール」

朝日に照らされたノートルダム通り。奥に見えるのはノートルダム聖堂
セントローレンス川に築かれた旧港から緩やかな坂に、かつて城壁にかこまれていた旧市街地「ヴュー・モントリオール」が。城壁はとっくに取り壊され、いまや市庁舎に、言われないと気づかない程度の城壁跡が残されているのみ。1642年、ここに居留地ヴィル・マリーが開かれ、モントリオールの礎となった。17〜18世紀の建造物が建ち並び、街に厳格な印象を与える。

モントリオールの観光写真でよく使われているノートルダム聖堂
セリーヌ・ディオンも結婚式を挙げた青いドームが印象的なノートルダム聖堂や、観光客でにぎわうジャック・カルティエ広場などがあり、とにかくモントリオール観光に来たのなら、ここは外せないだろう。
せっかくなのでおすすめしたい店がある。
「北米初の合法バー」とうたわれるレストラン「オーベルジュ・サン・ガブリエル」。

北米で初めて、酒類販売を認められた「オーベルジュ・サン・ガブリエル」
オーベルジュとは宿泊施設を兼ねたレストランのことだが、ここは現在、宿泊業はやっていない。1688年にフランス軍によって建てられ、1754年に酒類免許を与えられた場所で、当時の面影を感じるフランス料理を楽しむことができる。
特に夜はろうそくを思わせる暗さの中、330年前にタイムスリップだ。
迷子になったら「モン・ロワイヤル公園」を見よ

モン・ロワイヤル公園の模型。手前がセントローレンス川側。右手の丘の上には現在も十字架のオブジェが建ち、夜はライトアップされ街中から見える
「モントリオール」という名前の由来は「国王の山」を意味する「モン・ロワイヤル」からきている。モントリオールはセントローレンス川の中州なのだが、そのちょうど中央にある小高い丘に1535年、フランス人の探検家ジャック・カルティエが十字架を立て名付けたのがはじまり。街を歩いていると、どこからでもこのモン・ロワイヤル公園が見えるので迷子にならずに済む。

モン・ロワイヤル公園の、自動車では来られない方の展望台
標高232メートル、舗装された道もあれば、自然道を思わせるコースなど、いくつものトレッキングコースが用意されており、ちょっとした運動や考え事にぴったりだ。展望台は車で行ける場所と、トレッキングでしか行けない場所の2カ所があるが、おすすめはやっぱり自分の足でしか行けない方。トレッキング中、腐葉土を踏みしめて森林浴を楽しんでいたらアライグマに遭遇した。
B級グルメの名店も集中 「ル・プラトー・モン・ロワイヤル」

ル・プラトー・モン・ロワイヤルの街並みにグラフィティが映える
モン・ロワイヤル公園の北側に広がる地区で、学生や芸術家が多く暮らす若者街。階段付きの玄関が印象的な西洋の長屋「タウンハウス」が並び、鮮やかなグラフィティが目を引く。もともとイギリス統治下時代に、田舎から連れてこられたフレンチ・カナディアンが暮らした街で、20世紀初め頃までは労働者階級の街だったそうだ。現在は居心地が良くて刺激的な注目のカフェやレストランがひしめき合う。

絶妙な食べ応えのスモークミート・サンドイッチ。パンはもはやスモークミートを持つための食べられるカバー
モントリオールを代表するB級グルメ「スモークミート」の有名店「Schwartz’s Deli 」(シュワルツ・デリ)があるのもこの地区だし、人気を2分するベーグル店「Fairmount Bagel」と「St-Viateur Bagel Shop」があるのもここ。ベーグルはスーパーで売っているものと店頭のものと差はないそうだが、できたてをいただけるのはやっぱり店頭だ。ほかほかのベーグルをかじりながら、このあたりの住民のふりをして歩きたい。
洗練されたクリエーティブ地区「グリフィンタウン」
旧市街「ヴュー・モントリオール」や「ル・プラトー・モン・ロワイヤル」のような歴史ある建造物は見当たらず、あるのは新しいマンションと、改装された倉庫など――。そんな、観光客がわざわざ足を伸ばすとは思えない「グリフィンタウン」が、印象に残った。旧市街「ヴュー・モントリオール」の南にある。
住宅地を抜け、アスファルトに空いた大きな穴に気をつけながらシェアリングサイクルをこいでいくと、目的地到着。音楽は聞こえるけれど、ガレージの裏のような外観だ。

通用口のような地味な入り口
やって来たのはマイクロブルワリー「Brasseur de Montréal 」直営のレストラン。このあと取材で食事する予定があるけれど、ビールなら入るだろうとむりやりやって来た。モントリオールでクラフトビールを検索するたびに、ここがなんとなく気になっていたのだ。

外観からは想像のつかない開放的な空間だった
コンテナを再利用したテラスラウンジに、鉄骨がむき出しのブルワリー。インダストリアルな雰囲気が街の外観とも合っている。少し派手な古着のシャツを着た3人の若者が、テーブルを避けて席を作り始めた。なんとジャズの生演奏が始まる。てっきりお客さんかと思った。

ご機嫌なジャズが緩やかに流れ出した
気がつけばタイムオーバー! 西日に照らされながら残ったビールをあおると顔が熱い。
急がなきゃいけないのはつらいけれど、ビールがおいしいという楽しさをかみしめよう。きっとこんな考え方が「生きる喜び」なのだろう、とわたしは解釈した。
モントリオールで一番のお土産は、人生の楽しみ方だ。わたしは<楽しみを真ん中に置いた人生>を忘れない。
<つづく>
取材協力:ケベック州観光局
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PROFILE
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「あの街の素顔」ライター陣
こだまゆき、江藤詩文、太田瑞穂、小川フミオ、塩谷陽子、鈴木博美、干川美奈子、山田静、カスプシュイック綾香、カルーシオン真梨亜、シュピッツナーゲル典子、コヤナギユウ、池田陽子、熊山准、藤原かすみ、矢口あやは、五月女菜穂、遠藤成、宮本さやか、小野アムスデン道子、石原有起、高松平蔵、松田朝子、宮﨑健二、井川洋一、草深早希
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コヤナギユウ
デザイナー・エディター
1977年新潟県生まれ。「プロの初心者」をモットーに記事を書く。情緒的でありつつ詳細な旅ブログが口コミで広がり、カナダ観光局オーロラ王国ブロガー観光大使、チェコ親善アンバサダー2018を務める。神社検定3級、日本酒ナビゲーター、日本旅のペンクラブ会員。
公式サイト https://koyanagiyu.com/
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February 14, 2020 at 09:04AM
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