横綱照ノ富士(30=伊勢ケ浜)が「戦国場所」を制した。3敗で並んでいた隆の勝が敗れて後退。照ノ富士は結びで大関御嶽海を圧倒して寄り切り、3場所ぶり7度目の優勝を飾った。横綱昇進後、初の休場明けで初日に黒星。中日までに3敗と苦しんだが、終わってみれば見事に横綱の責務を果たした。

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鬼のような形相、そして厳しい攻めだった。御嶽海の左前まわしを取って起こすと、右も差し込み一気に走る。一分の隙もない完璧な相撲で荒れた場所の最後の相撲を締めくくった。

「うーんまぁ、やっと終わったなという感じですね。(休場明けで)いつもより長く感じたのはある。ただ結果はどうあれ15日間、全部取りきろうと。結果に表れてよかったと思う」

3敗で並んでいた隆の勝が4敗に後退した。勝てば優勝の一番でより厳しさを見せつけた。「(負ければ優勝決定戦など)次のことを考えてもしょうがないんで。今まで準備してきたことを全力で出すだけ。でなければ土俵に上がるのは失礼。それだけ自信を持っている」と言った。

先場所は右かかと、左膝の負傷で途中休場した。復帰した今場所も初日に黒星、中日までに3敗を喫した。「(休場明けで)場所前にあせりもあった。筋トレとか稽古、体調の面でとばしすぎた」。修正能力の高さも武器。9日目から7連勝で賜杯を手にした。

星が上がらない中日の朝、稽古場で十両の錦富士に「一緒に優勝するぞ」と声をかけた。「毎場所のように言っているけど、なかなか実現しなかった」。その弟弟子が先に優勝決定戦を制して十両優勝を飾った。「うれしかったです」。自身も闘志に火をつけた。

両膝の大けが、内臓疾患で序二段まで落ちて、再び横綱まで上り詰めた。地獄を見ているから強い。「土俵に上がっている以上は真剣に戦わないといけない。その思いで毎日、繰り返している」。役力士で2桁勝利は照ノ富士と大栄翔だけ。「(横綱として)もちろん、やらなきゃいけないという思いはあったが、みんな頑張ってますから。いい時も悪い時もありますからね」と責任を背負って戦い抜いた。

両肘、両膝、両足首を分厚いサポーターが支える。傷を負ってきた体の不安が消えることはない。サポーター以上に支えるのが、横綱としての責任感。「また来場所も頑張ります」。館内に戻ってきた満員に近い相撲ファンを喜ばせた。【実藤健一】