イギリスは欧州連合(EU)を離脱したかもしれないが、まだ数多くの疑問が残っている。
食品から貿易、国家安全まで、ブレグジット(イギリスのEU離脱)後にイギリスが解決すべき5つの問題について、BBC記者が説明する。
1. EUとの通商協定締結 ――クリス・モリス、BBCリアリティー・チェック(ファクトチェック)担当編集委員
EUから法的に離脱したことで、イギリスは正式な通商交渉を始めることができる。EUとだけでなく、アメリカなど世界各国と個別に交渉が進められる。
イギリスは現在、EUとの将来の関係を協議する11カ月の移行期間に入っている。
政府は、この移行期間を2020年末以降に延長しない方針を示しており、EUとの交渉期間は非常に限られている。
正式な協議は2020年2月、EUの加盟27カ国が交渉方針と交渉担当に合意してから始まる予定だ。
何らかの条約が署名にこぎつけ、発効されるまでには数カ月を要するだろう。つまり、現実的には非常に基本的な通商協定を結ぶ時間しかなく、移行期間後にも多くの問題についての話し合いが残されることになる。
イギリス政府は、EUとモノの商取引については「関税・割当枠ゼロ」を目指すとしている。つまり、新たな関税も、輸出入の上限も設けない構えだ。
しかし、イギリス側が貿易をできる限り円滑に保ちたいなら、解決が必要な問題は山積みだ。しかもこれはモノの取引だけの話だ。
金融業や飲食業、エンターテインメントといったサービス部門は、イギリスの雇用の8割以上を占めている。
もちろんイギリスもEUも協定の締結を望んでいるが、膨大なタスクが残されている。漁業権、公正な競争、欧州司法裁判所(ECJ)の役割といった課題で、両者の間にあつれきが生じると予想されている。
移行期間中に「合意なし」となることも否定できない。その場合、今年の年末に新たな英・EU危機が訪れることになる。
2.イギリスの安全保障の確保 ――ドミニク・カシアーニ内政担当編集委員
11カ月間の移行期間中に通商協定を結ぶだけでも大変だが、安全保障面でも対応が必要だ。安全保障で各国と協力するための協定にも合意する必要がある。
イギリスとEU双方で、警察・安全保障専門家がブレグジット後の安全保障対策は難しくなるだろうとの見解で一致している。
たとえば、イギリスはEU脱退により、EU域内の組織犯罪を捜査する欧州警察機構(ユーロポール)の首脳陣に参加できなくなる。
この影響で、海峡を渡ってくる密入国者や武器の密輸入など、イギリスにとっての優先課題が、徐々にユーロポール側で後回しにされるかもしれない。
またイギリスの警察は今のところ、EUが保有する外国人の犯罪記録や、欧州大陸で指名手配されている人物の警告を閲覧することができる。
しかしEU各国は、EU加盟国以外へのデータ共有について独自の法律を設けている。そのためイギリスは今後、こうした情報にアクセスできなくなったり、アクセスが難しくなる可能性がある。
イギリス政府は、将来に備えて早め早めに手を打とうとしている。
たとえば、EUと安全保障に関わる合意が成立しなかった場合でも、EU域内で犯罪者の身柄引き渡しを保証する「欧州逮捕状」のシステムを、イギリスが今後も使えるように法律を成立させると公約している。イギリスだけでなくEUも、その対応を希望している。
問題は、これが法的に可能なのかどうか、そして、移行期間の終わる2021年1月までに成立するのかどうかだ。
3. 食べ物の流通を止めない ――ケイティー・プレスコット・ビジネス担当編集委員
農業から漁業、製造、そして小売に至るまで、イギリスの飲食品産業は毎年、イギリス経済に4600億ポンド(65兆7000億円)の経済効果をもたらし、400万人以上の雇用を生み出している。
製造業の中でも5分の1を占める、最大の業界だ。。
こうした中、消費者へ食品を届ける複雑なプロセスが、移行期間が終わるとどうなるのか、不安視する意見もある。
食品産業ではたらく人の3分の1は外国籍で、その多くが東欧出身だ。
イギリス政府はEU離脱に伴い、移民受け入れ条件として最低賃金を設ける計画を打ち出している。これによって、必要な移民労働者の数が確保できなくなったら、どうなるのだろうか?
貿易面でも、ブレグジットによって国境で物品検査が開始されれば、追加の費用がかかるだけでなく、生鮮食品の消費期限が短くなってしまう。
しかし、業界団体のイギリス食品・飲料連盟(FDF)は、製品の「原産地規則」について要件を満たす協定をEUと結べるかどうかが、何より複雑な問題だと指摘する。
イギリスの食品は国内外の原材料を組み合わせて作られているが、こうした製品は、最近EUが結んだ通商協定の規則では認められなくなる。
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4. 世界で新たな役割を築く ――ジェイムズ・ランデール国防担当編集委員
イギリス政府にはEU離脱後、世界で新たな地位を築かなくてはならない。これは巨大な作業になる。
政府の掲げる「グローバルなイギリス」とは実際に何を意味するのか、閣僚たちはこれから決めなくてはならない。
欧州とアメリカを結ぶ伝統的な橋渡し役は、今後は重視されなくなる。
代わりに、政府は今までよりも独自の外交政策を策定しなくてはならない。たとえば、対外関係よりも内政問題を重視している今のアメリカについて、イギリスは従来ほど自動的に支持しなくなるかもしれない。
また欧州各国とは、EUの仕組みを通じてではなく、もっと小規模な既存の外交グループを通じて、新しい関係を築くことになる。イギリスとドイツ、フランスで形成する非公式グループ「E3」などがこれに当たる。E3は、イランとの関係などについて一緒に取り組み、共同歩調を作り上げてきた。
外交政策で最も困難なのは、EUという後ろ盾がない中で、存在感を増す中国と防衛策に走るアメリカの間をどう切り抜けていくかだ。
ボリス・ジョンソン英首相はこうした事態に向け、イギリスの安全保障、国防、外交政策について「統合的な評価」を行うよう指示した。報告は年内に予定されている。
5. あれだけ議論しただけのことはあったと証明する ――ローラ・クンスバーグ政治編集長
ロンドン・ウエストミンスターのコレッジ・グリーン広場に抗議にやってくる人たちは、めっきり少なくなった。
どれだけ熱烈なEU支持者でも、ここ数年続いた激しく、時に苛烈でさえあった政治対立はもう終わったのだと、認めざるを得ないだろう。
ジョンソン首相は今後、あれだけの混乱と言い争いはそれだけの意味があったのだと、証明していかなくてはならない。
それは決してたやすいことではない。EU離脱派は、EUから取り戻す権限をできるだけ早く、最大限に行使したいと思っている。
しかし私たちは今、移行期間という出発ロビーにいる。この期間は、ほとんどのことが現状維持のまま続く。
もし1月31日の夜にEU離脱を祝してシャンパンを開けたとしても、2月1日の朝には大して違いを感じなかったはずだ。
離脱派の情熱や興奮を、制御できるのだろうか?
それに、離脱や残留かの議論が終わったとは言え、イギリスが愚かな道に歩みだそうとしていると今も考える有権者はいる。首相官邸が求めている通商協定を年末までに締結するのは、ともかく無理だという大きな懸念も広がっている。
ジョンソン首相は、もう二度と「ブレグジット」という言葉を耳にしなくて済むなら、大喜びだろう。しかし彼は離脱派に対しても残留派に対しても、EUを離脱しただけのことはあったと、その意義を示さなくてはならない。
ジョンソン首相はすでに歴史の本に名前を残したが、彼についての章はまだ書き終わっていないのだ。
(英語記事 Five things the UK needs to resolve after Brexit)
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February 01, 2020 at 03:00PM
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